移ろいを感じて
移ろいという言葉があります。
物事の状態が盛りを過ぎる事を指すのだそうですが、他にも季節の移ろいであったり、心情の移ろい、住まいを移す時等に使用される言葉です。
先日チューリップが最盛期を迎え始めた事もあり、足を延ばしてきたのが4月の後半。
今この瞬間は5月を迎えようかという頃ですが、ここから最盛期を迎えるのはやはり日本の北になっていきます。
季節は移ろいますが、その中でも日本の中で時期がずれて季節の移ろいを感じる事が出来るのだと改めて思った所です。
広島県世羅郡にある世羅高原農場。
以前ダリアをご紹介したと思いますが、この時期はチューリップが園内を所狭しと彩ります。
今年で45周年を迎えられたとの事で、この界隈にある数か所の農園の中で一番歴史が古い農園だそうです。
チューリップ畑は65,000㎡の広さを誇り、75万本の花が園内を飾ります。
ここも少し前までは桜が咲き誇っていた所です。
少しの時間の経過と共にガラッと違う世界を展開するこの風景には、移ろいを感じます。
更にこの後夏になると、この風景は黄色一色のヒマワリの風景へと変わっていきます。
私は毎年チューリップを見に伺うのですが、毎年来ても飽きさせない新しさを感じさせてくれます。
レイアウトであったり、新しい品種であったり、毎年「違い」という昨年の記憶を蘇らせてくれるのもここの魅力のひとつだと思っています。
全てがこの園の関係者の努力、その一言に尽きる。
帰り道にいつも思うのがそれです。
切花の関係の方はマウントタコマはよくご存じの品種だと思います。
シエナダブル―も時々見かけますね。
個性的なペップトークはもっと赤主体の色目になったり、違う表情を見せてくれるのも魅力です。
切り花の世界ではほぼチューリップの出荷は終了を迎えてますが、日本のあちらこちらで自然の中に咲くチューリップをまだこの先も堪能できます。
ラ・マンチャはアラビア語ですが乾いた土を意味する単語です。
やや色気ある色に見えますが、赤茶けた土をイメージでしょうか。
爪白が更に赤を引き締めた絶妙な色合いです。
ドリーマーは大きく開き切る花姿に柔らかい色目で、大きな優しさを感じる包み込む様なイメージでしょうか。
アケボノはもっとオレンジっぽいものや赤っぽい仕上がりになるものがあって個体差のある品種です。
世羅高原農場は5月8日までチューリップ祭りが開催されるそうですので、ゴールデンウィーク中は多くの方で賑わう事でしょう。
東北や北海道のチューリップ園はここから本番を迎える所が多いですので、北国はまだまだ長く楽しめそうです。
移ろいという言葉を見出しに始めましたが、今年も3分の1が終わろうとしています。
暖冬の影響もあってかあっという間の冬が終わり、更には春も終盤を迎えます。
日本には四季があるので余計に移ろいという物を感じやすいのかもしれませんが、春は色々な意味で移ろいを感じる季節です。
新天地で新生活が始まった方もいれば、私の様にのほほんと季節の移ろいを感じている方もいらっしゃるでしょうし、寒かったり暖かかったりで翻弄されている方もいらっしゃるでしょう。
ふと立ち止まって時や時間の経過を思う余裕はとてもいい事です。
先へと進み続ける移ろいを感じると同時に、後ろへ遡って記憶を辿る。
また今年のチューリップを記憶に、来年もこの場所を伺えれば。